やはり化石が必要か
「天狗の絵本が出るんだけどさ、天狗について取材して来てくれない?」
唐突な編集Aからの電話は、内容も唐突だった。
まぁ電話というものはいつでも唐突なものなんだけど。
それにしても「天狗」って。
普通に生きていたら、天狗についてなんて調べるどころか考える事もないだろう。
しかし編集直々の電話となれば、答えは「はい」か「YES」しかない。
もしも断ったとなれば、釘のついたバットで百叩きに合うかも知れない。
束ねた有刺鉄線で全身をゴシゴシ洗われるかも知れない。
私は心から天狗の取材をしたい、と感じて貰えるように最大限の喜びの中でオッケーした雰囲気を全身で表した。電話だけど。
それにしても「天狗」か。
その昔に「そこにいた」という話を元に取材することにはなるのだろうが、果たして本当に天狗などいたのだろうか?
しかしよく考えてみれば、恐竜も見た事がある人はいないにも関わらずいた事になっているし、何なら神様や仏様も実際にこの世界にいる体でみんな信じたり拝んだりしている。
あきらめなければ、いつか必ず出会える。
そう信じて行くしかない。
もしかしたら恐竜と同様に天狗や神様の化石なんかも見つけれられるかも知れない。
ただ、そこに行き着くには、きっと自身の経験や勘だけがモノを言うのだろう。
そう考えて、私はあえて一切の下調べもないまま取材に向かった。
決して下調べが面倒くさかったワケではない。
さあ天狗待ってろ!
*編集Aは優しい人です。
天狗と私
よく考えてみたら、私は天狗について考えてみた事がある。
前段で「普通の人は考えた事はない」などと書いてしまったが、残念ながら考察をしていた事実があった。
非常に残念だ。
だがせっかくなので、その時の考察を自身の「note」から抜粋してみたい。
天狗。
それは日本において最古の部類に入るほどの伝説の生き物である。
しかし、我々は天狗について驚くほど知らない。
そこで、天狗について考えてみた。
まず天狗について気になるのは「普段は何を食べているのか」という事だ。
人里離れた山奥で暮らしているのだろうから、恐らく海の幸などを入手する事は難しいであろう。
恐らく魚類だったらイワナやウグイ、動物だったらウサギやイノシシ、シカなどであろう。
しかし動物性たんぱくばかり摂取していると身体に不調を来すので、恐らく野菜類も食べているはずだ。
野菜類に関しては山なので当然の様に山菜は豊富。
その季節にその山で採れた旬の山の幸をふんだんに楽しんでいる事と思う。
マクロビオティックの観念に基づくと、天狗は大変ロハスであると言えよう。
次に気になるのは「コミュニティ」に関してだ。
天狗は天狗だけではなく「小天狗」などというものもいる。
という事は、恐らくだがメス天狗などという生物も存在して、子孫を繁栄させている事であろう。
しかもその歴史を鑑みるとするならば、恐らくは天狗族のコミュニティは巨大であると容易に推測出来る。
それだけの人々もとい天狗天狗がいるという事は、子育てで悩む天狗や仕事や学業でつまずく天狗、人徳ならぬ天狗徳がある天狗やそれをねたましく思っている天狗などもいるはずだ。
さらに気になるのは、やはりあの服である。
「どこで買ったんだろう?」という疑問は、皆さんも一度は考えた事がおありだと思う。
一般的に考えると、あれは恐らく繊維で出来ている。
という事は、綿花などの加工の技術や機織りの技術などを有していると言える。
その加工や技術から導き出されるのは、労働とその対価のあり方であろう。
その対価があるという事は社会は分業制で、他にも様々な職種がある事になる。
労働者とそれを統べる管理職、その管理職の人間の対外業務。
接待で高級な飲み屋さんに行く事もあるだろう。
領収書を切ってみたものの経理の天狗に「これは落ちないですね〜」などと言われる事もあるだろう。
対天狗関係に悩む事もあるだろう。
やけ酒に溺れて天狗生を棒に振ってしまう天狗もいるだろう。
更生施設で第二の天狗生をやり直す事もあるだろう。
怒ったり、悲しんだり、笑ったり、泣いたり。
恋もするし、裏切ったり裏切られたりもするし。
許したり、微笑んだり、愛でたり。
結論。
天狗、恐るるに足らず。
随分前に書いた文章だが、今読んでも実に「何を言っているんだこいつは」と言わざるを得ない文章だ。
私のnoteにはそんな駄文が山ほど綴られているので「時間を無駄に過ごしたい!」と言う方がいたらぜひ読んでみて頂きたい。
きっと何も見つからないはずだ。
さてさて、天狗についての考察をここでしていても始まらない。
教室を飛び出すスタイルで元気良く歩き回るのが取材の第一歩だ。
幸いにも筆者は元気が有り余っているタイプだ。
さぁ、果たして天狗には出会えるのか!?
取材スタート!
かけつけ400ml
まずは今回の絵本の舞台となった八幡神社へ行く事にする。
沼津市役所の駐車場に車を停めて歩道橋を渡ると、市役所の前に停めてある一台の車が目に入った。
【心安らぐ赤十字】
おっ。今日は献血の日か。
バスに近づいて看板を見てみるとそこには…!
【義を見てせざるは勇なきなり】
こんな自分でも世の中に出来る事がある。
むしろ多くの人に迷惑をかけて来た、いわば罪滅ぼし。
そう思って早速献血の申し出をする。
受付を済ませバスの中に入ると、隣に座っている人が話しかけて来る。
むむっ!?もしや、早くも天狗か!?
【最近の天狗はキュートだな…】
誰かと思えば、沼津市の小学校なんかでリトミック遊びをやったりしているナイスピアニスト「ナッツ」の峯松ゆきちゃんだった。
今回が初めての献血とのこと、緊張で全身が硬直していた様子だった(ウソだけど)
ゆきちゃんと久々の再会を喜びつつお互い血を抜いた後のリラックスで30分ぐらい立ち話。
おい天狗はどうした天狗は。
ちなみに献血はいつでもウェルカムな様子なので健康な成人の皆様はぜひご協力を。
子どもたちは大人になってからのお楽しみ!
今回はペットボトルの水と砂糖1kgを頂いた。
これでまた血液増やして献血するぞ!
乙女のピンチ
さてゆきちゃんの「この後用事があるから」のひと言で冷たく切り捨てられた筆者は改めて天狗の取材へ。
改めて向かうは八幡神社。
沼津市役所からすぐですからね。
トコトコ歩くとあっという間に到着。
【見よこの荘厳ないでたち】
まずは正面からの写真を撮って、近くの横断歩道を渡って神社の境内を目指す。
車に轢かれたくないからね。
【なかなかに万能】
【隠しきれない歴史の重み】
【わーなんか天狗いそう】
まずは境内の中を散策。
だけどいつ天狗に襲いかかられてもいいように念のためにつま先立ちで歩く。
すると入って早々、左側に気配が!
【誰だ…お前はいったい誰なんだ…!?】
【乙女の神…女神とかじゃなくて?】
「乙女の神」と書いて(というか彫って)あったので恐らくはそういうのなんだろう。
沼津中の乙女を自覚する方はぜひ行ってみてほしい。
どんなご利益があるかは書いていなかったので、それもぜひ自身で体感していただきたい。
そして体感した方は編集部にご一報頂けたら幸いだ。
これもよくよく調べたら昔話があったりするのかも。
何だか楽しくなって来た!
1/3の純情な神社
さていよいよ境内の中へ。
神社としての普通の機能は一通りそろっている。
【SIAM SHADEじゃないよ社務所だよ】
【こんな所にもコロナ禍の影響が】
【地域の防災の要所でもあるんだね】
地域における「鎮守の森」としての神社について考えさせられる。
昔から名実ともに近隣の人々の拠り所だったのだろう。
時代は変われど、こういった代々続く場所は大切にしていきたい。
【ん…?】
【なんかいる!】
【ありがたこわい】
灯籠に天狗が張り付いているかと思いきや、福の神風な方が一人。いや一神。
この神様も夜な夜なここを抜け出してトコトコ歩き回っていたりするのだろうか。トイストーリーよろしく。
もしも歩いている福の神と暗がりでバッタリ出会ったら、ありがたいけどメチャ怖い。
これじゃ天狗に「相撲しよう」と言われた昔の村人の怖さがわかる気がする。
これが俗にいう「畏れ」ってやつか。勉強になるなぁ。
衣干したり 雨の狩野川
八幡神社の西側にはちょっとしたスペースがあり、そこから狩野川沿いに抜けることが出来る。
【見よ鋼鉄の掟】
【この茂みにも天狗がいそう】
香貫公園を抜けて行くとそこには!
【このはしわたるべし】
中央公園に抜ける橋「あゆみ橋」の登場!
写真は曇り空でちょっと残念だけど、天気のいい日は良い眺めだろうな。
橋のたもとにも少し休めるスペースがあり、我ら市民を平等に癒してくれる。
【あれなんかあるぞ】
【天狗の衣か!?】
どうやら何者かが脱ぎ捨てていった衣類のようだ。
もしやこれが天狗のものかも知れないとも思ったが、どこかの知らない人が汗まみれになったまま置いていったかも知れないという可能性を考えて手にする事を諦めた。
こういうのって交番とかに持って行くべきなんですかね?
という事でここまで天狗とのエンカウントはなし。
金木犀の香りが漂う昼下がりの神社を散策しただけのおじさんとなってしまった。
このままで終わるわけにはいかない。
そう考え、捜索対象を神社周辺まで広げる事とした。
天狗いないかなー。
市場の跡地を訪ねたら
いよいよ神社を後にして周辺を捜索。
【昔は市場があったんだね】
まずは最寄りの横断歩道を渡るとそこには!
【まさに銘店!】
沼津市でも有名なうなぎの「冨久家」さんを発見!
筆者も頂いた事がありますが、本当に美味しい!
このままフラフラっと入ってしまいそうになりましたがいかんいかん。
今日は取材だ。
心を鬼にして後にする。
絶対に近々行ってやる!
それにしてもこの辺りを歩くのは久しぶりだけど、興味深いものいっぱいあるなぁ。
【雰囲気のある通り】
【こんな所にギャラリーが!】
ちょっと調べたら最近リノベーションされたアートスペース「EN」だった。
色々な展示やイベントをやっているようでとても興味深かったがこの日は定休日。
ここに天狗のヒントが…ないか…
【うわーこれもかっこいい】
こちらも調べたらジュエリーブランド「CESTA DI KARATI」でした。
なんだ市場町!すごいぞ市場町!
色々と感動して天狗の事を忘れそうになりながら歩いていると目の前に現れたのはこちら。
【沼津市民ならお馴染みMary Loo】
ここは昔からお世話になっている老舗の喫茶店。
最近はご無沙汰だったのでひさしぶりにお店を覗いてみようと思うとそこには!
【本日のランチ】
先ほど冨久家さんを我慢した筆者なのにあっさりと吸い寄せられてしまう。
だってだって…ステーキ丼って…お昼どきだったし…
テンーグーを探せ
はいご馳走様でした。
大変美味しゅうございました。
グルメレポじゃないので内容は細かく書かないけど、まだ行ったことの無い方がいましたら是非。
味は間違いなし、お値段は優しい、雰囲気はいい、文句なし!
それにしても、こんな素晴らしいものがこんな狭いエリアにあるなんて。
自分が知らないだけで、自分の住んでいるエリアや地元なんかにもまだまだ知らないものがいっぱいあるのかも。
やっぱり自分の周りを知るって大事。
と文章をまとめに入ってしまいそうになったが忘れていた天狗。
このままでは編集AにT字カミソリで歯磨きさせられてしまう!
お腹もいっぱいになった所でGo!
と意気込んで出かけたものの、この後あちらこちら合計1時間ほど歩き回ったが、結局天狗に遭遇どころか天狗にまつわるものも見つからず。
【日本政策金融公庫のショーウィンドウ】
【残念…天狗じゃなかったか…】
結局最終ゴールの八幡神社の手前で見つかったのはこの家族だけでした。
【世界で一番探されてるアイツ】
終わりに
どうだっただろうか?
結局天狗には会えなかったが、たくさんの素敵なものや場所と出会えた。
今回のまとめ
- 献血は大事
- 八幡神社カッコいい
- 衣類の落とし物は交番へ
- 冨久家おいしい
- 香陵の径ステキ
- マリールウのランチ良い
- 西伊豆は日本一の夕日
- 不動産の事ならアットホーム
みなさん、楽しんで頂けただろうか?
この記事が皆さんにとって何かの足しになることを祈ってやまない。
そしてもしも天狗を見たいなら!
やっぱりe-monogatariだよね!
という事で編集部にコビを売ってどうにか次の仕事が来る事を祈って筆を置く。
皆さままた会う日まで!
会える時まで!
この記事を書いた人
遠藤 貴志
ロックバンド「GOOFY'S HOLIDAY」のボーカル/ギタリスト。
1994年に結成後、全国のライブハウスを股にかけて活動中。
「インディー界一のツブシのきく男」「バンド界の激安グルメ王」「元気の国の王子様」「マスターオブ弾きたがり」など様々な異名を持つ。
バンド以外にも沼津市で「MUSIC&BAR QUARS」を経営したり「Tube Drive Records」という弱小レーベルをやったり謎の企画集団「L2G PRODUCTS」をやったりとそこそこマルチに活躍、どれもまんべんなく儲かっていない。
愛する地元と地球をよりよくするため出来る範囲で健闘中。